東京に新しい電波塔が立っても、東京タワーは光を失わない。

 
人々の興味を奪われてなお、広い空に向かってそそり立つ。




「綺麗……」
 

見下ろした下界で、車のライトがうごめいてた。 
 
真っ黒な川を流れる灯篭(とうろう)みたい。



「萌はほんと、夜景が好きだよな」 

「うん。生きてるって感じがするから」
 

私の言葉に、ミーくんはきょとんとする。


「なんだ、それ」

「へへ」 
 



ビルの上で明滅する赤いライトとか、道を流れるテールランプとか。
 
黒い世界で、大地が脈動するように光ってる。
 


それは昼間は見えない本来の息吹を見てるようで。


 
暗闇は昼間の粗をすべて包んでくれる。