「森川君がね、レギュラー外されちゃったの」
「森川君?」
ピンとこないまま考えて、この間告ってきた男子だと思い当たる。
堀の深い顔を照れくさそうに赤らめていた彼。
「それはお気の毒……」
言いかけた途端、罵声が飛んできた。
「ふざけんな! オマエのせいだろ!」
正面から勢いよく足が蹴りだされて目をつぶる。
痛みはなかった。
見ると、顔の真横、倉庫のコンクリート壁に靴跡がついていた。
チア部は一見、華やかな笑顔で軽々と演技をしていそうだけど、意外と筋肉質だ。
そんな足で、手加減なく蹴られたらどうなるか。
怒りと恐怖で唇が震える。


