私の幸せを望む人がいるから、 私は頑張らなきゃいけないんだってさ。 はるか彼方を眺めながら、言葉を放った。 「……なんか、萌がモテんの初めて分かった気がする」 しばらく沈黙が流れた後、ノゾミがそう呟く。 「なにそれ」 「ううん、……ごめんね」 「はは、何の謝罪? それ」 錆びた非常階段。 手すりの塗装が剥げ落ちて、落葉みたいにひらりと、宙を舞った。