*嘘月とオオカミ先輩*


 

雑居ビルに挟まれた小さな小さな公園。

2人はその公園のベンチに並んで座っていた。
 


あたしは闇に乗じ、葉を落とし始めている低木の陰に身をひそめた。

そのまま2人の声が聞こえる距離までゆっくり近づいていく。
 


先輩は笑っていた。
 
耳に入るのは談笑する2人の楽しげな声。



「あんたってホント馬鹿だよね」

「はぁ? お前ほどじゃないから」
 


仲がいい2人の気を許しあった掛け合い。
 
いつでも誰にでも優しい先輩が同期だけに見せる、安心しきった表情。
 


胸の奥が疼いて、気持ちが落ち着かなかった。
 


やがてベンチに落ちる短い沈黙。