*嘘月とオオカミ先輩*



般若の面相で睨んでくる七海に気圧されて、思わず頬が引き攣った。


「わ、わりぃ」

「もーしっかりしてよ審判」


唇を尖らせて後でまとめた長い髪を払う七海。


「どーすんの今の。ノーカウント?」


少し苛立たしげなその声にもう一方のプレーヤーを見やると、オレや七海と同じ学年の瀬良ユキナ(せら ゆきな)は身体を竦めるようにして笑った。


「いいよインで。ナナミの得点にしちゃってよ」

「『いいよ』って何その言い方ー!? 明らかにスペシャルミラクルサーブだったじゃん!」


子供みたいに憤りを露わにする七海に、ユキナと2人で苦笑を漏らす。

と、七海が丸い目をすがめ、不満を顔いっぱいに広げた。