「月のない夜なのに満月って変じゃないですか」 あたしの指摘を聞いてるんだか聞いてないんだか、先輩は急に顔を上げて頭上の月を眺める。 「今日の月はまた一段と綺麗だなー」 「……人の話聞いてます?」 呟くと、先輩はあたしを抱きしめる腕に力を込めた。 「ね、このままオレん家に連れて帰っていい?」 「え?」 「もー我慢ならん」 そう言うと、先輩はあたしの手を取って歩き出した。