*嘘月とオオカミ先輩*



ポカンとしてるあたしから手を離し、先輩は苛立たしげにしゃがみこんだ。

かと思うと、石ころを拾って土の地面に大きく文字を描く。



「ツッキーの免許証でちゃんと見てんだよオレは」



言いながら、描き出されたのは――




“ 悠 ”



の文字。



「これで『ゆう』。ツッキーの名前だろ」



しゃがんだまま、意地を張った子供みたいに見上げてくる先輩。

あたしは相変わらずポカンとしたまま、小さく口を開いた。



「あたしの字ですけど……それで『はるか』と読みます」