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岩崎栞が一人暮らしを始めたのは、ほんの半年前のことだった。


高校卒業後すぐに家を出て、小さな印刷会社で働き始めたのがキッカケ。


特に、目指しているものや大きな夢があるわけではない栞は、毎日毎日、なんとなくバスに揺られ、なんとなく会社へ行き、なんとなく任された仕事をこしていた。


それは、自分の城でもあるアパートへ帰ってからも同じだった。


本格的な夏が近い、六月中旬。