恐怖短編集

大量の涙が溢れ出す。


「こんなつもりじゃなかったの」


あんなに嫌だった言い訳が、自分の口からも簡単にこぼれだした。


私は毎日毎日ここで夢を見ていたのだ。


電車の中のチカンは、母親を必死で現実へ引き戻そうとする、我が子の小さな小さな手……。


「ごめんなさい! 真美、真美」


どうして早くそれに気付かなかったんだろう。


殺してしまった。


私が、この手でみんな殺してしまった……!


体の振るえが止まらないまま、さび付いた果物ナイフを手に取る。