恐怖短編集

「それにしてもデケェ森だよな」


孝が木で覆われた空を仰いだ。


「どこまで行っても木しかねぇよ。出るなんてデマに決まってんだろ」


茂が孝からタバコを受け取り、くわえながらそう言った。


「だよな。もう疲れたぜ」


「せめてこんなヤツでも出て来いよな」


東夜は持っていた懐中電灯で自分の顔を下から照らしながらそう言った。


「バカじゃねぇの」


軽く笑い飛ばす孝。


「東夜は素のままでも十分怖い顔だろ」


その茂の言葉に「なんだと」と睨む東夜。


そんな調子でしばらくの間三人はくだらない話を続けていた。


こうしていると森の静けさも気味悪いコウモリの羽音も自然と気にならなくなり、時間がたつのも早く感じる。