恐怖短編集

そして、無言で歩き続ける事更に三十分。


あの時、茂の言葉で帰っていればよかった。


と、東夜は思っていた。


思いのほか森は深く、歩いても歩いても灯りは見当たらないし、どんどん方向感覚が失われていく。


このまま遭難してしまったら?


この狭い持ちの中で、そんなバカバカしい不安が頭の中を行ったり来たりしていた。


「休もうぜ」


帰ろう、と言うのが恥ずかしくて、東夜はそのまま大きな木の根に腰を下ろした。


「あぁ」


二人も息をついてその場に座り込む。


足場も悪かったので、軽く息が切れて汗が滲んでいる。