確かに、昼間でも近寄る事のない森は、夜中では本当に何かが"出る"といわれても不思議ではない。


そもそも、麻雀に負けたら罰ゲームに一時半から三時までの間、森を探索する。


と決めたのは紛れもなく自分、七瀬東夜本人なのだ。


東夜は元々麻雀に自信はあったものの、今日は何故かボロ負けしてしまったのだ。


結果、こうして同じく麻雀に負けた恵庭孝、真田茂と共に森の中を歩いている。



「なぁ、もう帰ろうぜ。どうせ何もねぇよ」



歩き疲れたように言ったのは茂だった。


肩まで伸ばした髪が気になるのか、さっきから女のようにひっきりなしにつついている。


「でもまだ三十分しか経ってねぇしなぁ」


東夜が答えた。