恐怖短編集

私は、思わずそう聞き返していた。


「もちろん。私の言う通りにしていればね」


大きな占い師の目が私の体をなめ回すように見つめた。


その薬が本当なのかどうか、いまだにわからないが確かに私は生きていた。


たった一つの薬だけで、以前とかわらぬ生活が出来る。


けれど、自分の心臓が動いていないと気づいたのは、それからすぐの事だった。


母親に言わなければ、咄嗟にそう思ったが、私はふと気づいた。


私、死んでるんだ。


死んでるのに動いてる……。


これが、占い師の言っていた薬の効果だとしたら?


そう思うと背筋が凍る思いだった。


自分の止まっている心臓に手を当てて、ゆっくり口の中で薬を転がす。


本当に死んでるんだ。