恐怖短編集

「あの薬、きくでしょう」


自信満々の笑みをたたえて、占い師はそう言った。


「ええ、けど体がおかしいって言っているの。他の病気かもしれないし」


不安そうな表情の母親。


占い師は急に無言になり、水晶玉に両手をかざして目を閉じた。


「見えます……」


と、占い師が言い、母親が身を乗り出す。


「娘さん、ご飯を食べていないでしょう」


その言葉に、私も両目を見開いた。


たしかに、病気をした日以来、元気は出ても食欲だけはなかった。


口にするものと言えば、妙な薬ばかり。


「そうなんです!」


母親の声が一段高くなる。


「では、今までの薬をすべてやめさせて、永遠の命になる薬だけを飲ませてください。


そうすれば、娘さんは食事をしなくてもいい、無敵の人間になりますよ」


「食べなくてもいいんですか?」