恐怖短編集

けれど、母親は死人のような目で私を見つめて、


「大丈夫よ、お母さんがどうにかするから」


と言った。


それからしばらくして、父親の家族から父親が死んだと知らせが来た。


あまりにも突然のことで驚いたが、話を聞くと車で事故をして死んだらしい。


再婚相手も、そのキラキラする家族も、私もみんな泣いた。


ただ一人、母親を除いて皆……。



私は葬式場で軽く微笑む母親に気づかないフリをして、父親の位牌に手を合わせた。



ごめんなさい。

お母さんは普通じゃないの。きっと……、きっと、お父さんを殺したのだって本気で憎かったワケじゃないわ。


だから、許してあげて。


心の中でそう言い。私は涙を拭った。


私は母親に対して何も言わなかった。


こわかったのではない、父親を殺した後にこれまでになく元気な母親を見てしまい、これでよかったのだと思った。