恐怖短編集

「お母さん……」


いい加減、やめてよ。


そう言いたかった。けれど、私はグッとその言葉を飲み込んで「飲んでみるよ」と笑顔をつくる。


母親がここまで変わってしまったのも、私のせいなのだろうか?


あの時、怒鳴ったりしたから?


どう考えてもうさんくさい占い師、それさえ信じきってしまうなんて……。


私は、赤い薬を口の中に入れて、あふれ出す涙と一緒に飲み込んだ。


せめて、父親が迎えに来てくれれば。


そう思うが、今は母親を一人にする方がよほどこわい。


この人は一人ではダメなのだ。


とにかく、何かにしがみついて束縛していなければ生きれない、そんな人なんだ。