恐怖短編集


目の前に教室があった。


「教……室?」



私はキョトンとし、あたりを見回した。あの白い男はどこにもいない。


夢?


理解できないままに、誰もいない教室へ入る。


すると、一番に自分の机とアリサの机に目が行った。


二つの隣り合った机には、花瓶が立てられている。何本かの、白い菊の花。


「なんだよ、これ」


頭に血が上るのがわかった。


「誰だよ!」


そう怒鳴り、花瓶を投げ飛ばそうとする。


その瞬間、世界がゆがんだ。


花瓶も花も机も教室も、渦のようにゆがみ、体育館が目の前に現れた。


生徒達が次々と中へ入っていく。


校長がマイクをにぎると、生徒達のザワメキがゆっくりと消えていった。