恐怖短編集

それを見て、嫌な予感が脳裏をかすめた。



大きく肩で呼吸をしながら、再び玄関の前までくる。


ノブに手をかけて、回す。


「嘘でしょ……」


ドアは開かなかった。



さっき自分が開けて、それから誰もカギをかけていないはずだ。


でも、ドアはあかない。


私は数歩後ずさりし、それから何かに弾かれたように駆け出した。


「おかしいよ、ふざけんなよ!」


時々そう奇声をあげ、頭をかきむしる。


勢いにまかせて壁を蹴ったとき、今朝見かけた牛乳瓶が目に入った。


ひとつになった牛乳瓶にはしおれてしまった菊の花が立っていて、今にも風で飛んでいきそうだ。