恐怖短編集

震えがおさまらないままに、私は庭へ向かった。


庭から見える大きな窓からは電気の灯りが洩れていて、カーテンの向こうに人の気配がある。


「お母さん、お父さん!」


必死になって、その窓を叩いた。


弱いガラスだ、これで気付かないはずがない。


「開けてよ!」


けれど、反応はない。


それ所か、近所の人たちが迷惑がって出てくる気配すらない。


「ふざけんなよ!」


私はとうとうキレた。


キレ方は、心の中であれほど下に見ていたアリサと全く同じだ。


近くにあった石を握り締め、思いっきり窓へ投げつける。


石は窓に当たった。


確実に当たったが、跳ね返ったのだ。


ガラスは割れない。


傷さえついていない。