恐怖短編集

リビングの前まで来ると、足が震えだした。自分で立っていられるのが不思議になるくらい、ひどい震えだ。


見ちゃいけない。


そう思っても、顔はリビングの方へ向く。


電気は消えていて、話し声はしない。


私の手が、まるで他人のものになったかのように、ドアノブへ向かった。


ガチャ……。


ガチャガチャガチャ


「開かない」



目には涙が滲んできた。


歯をくいしばり、今までにないほどドアを殴りつけ、蹴りつける。


「開かない!」


そう叫び、キッチンとは逆へかけだした。


目の前に少し狭い玄関が見える。


傘立てには、お気に入りのオレンジ色の傘が一本。


私は裸足のまま外へ飛び出した。


こわくて、体中が震えている。