恐怖短編集

喉を潤すため、私はまた一階へと向かった。


母親のこともきになったけど、リビングを通らずにキッチンへ向かおうと思った。


そして、階段を半分おりたところで、私は足を止めた。


「あれ?」


なにかおかしい気がする。


何がと言われたらわからないけど、まわりの雰囲気が急に変わったように感じた。


首を傾げながら、一段、階段を上る。


その瞬間、母親の泣き声が聞こえてきた。


そうだ。


今、半分おりたところで泣き声が聞こえなくなった。


だから雰囲気がかわったと感じたのだ。


私はまた一段おりた。


その瞬間泣き声はピタリと止まる。


しばらく呆然とその場に立っていたけれど、急に体中から冷や汗がふきだしてきた。


一体自分のまわりで何が起こっているのかわからない。


こわくてこれ以上は進めない。


だけど、その考えとは裏腹に、私の足は一歩、また一歩と階段を下りていく。


リビングを通り過ぎて、キッチンへ行くのだ。