恐怖短編集

私の頬に、暑さで汗が流れた。


ここは全く冷房が効いていないらしく、時折息苦しささえ感じる。


その時だった、薄暗い闇の中から、一人の人間が姿を見せた。


身長からいうと、男で間違いないだろう。


「あんたが私を誘拐したの?」


単刀直入な問いかけに、覆面マスクをかぶった男は何も返事をしない。


「聞いてんの!?」


イライラしながら男へ怒鳴りつけ、私は目の前の柵を両手でつかんでガタガタと揺らした。