恐怖短編集

口を塞いでいたガムテープが、男の流した血によってようやく剥がれ落ちた。


男は口で大きく息をしながら、箱の壁を使って上半身だけを器用に起こす。


けれど、両目が使えなくなった状態では、周りに助けがあるのかどうかもわからない。


天井からのしずくは、ジュッと、何かを焼くような音を立てて、男の体を溶かしていく。


その液体を出す穴は一つではない。


天井一面に、まるでそれが模様であるかのように無数に開いているのだ。


「誰か! 助けてくれ!」