恐怖短編集

その時だった。


男の頬に、冷たいものが伝って行った。


……涙?


一瞬そう思い、開きっぱなしだった目で何度か瞬きをする。


その時、男の目の上に、何かがポツリと落ちてきた。


「うぅっ!」


目から頭へ突きぬけるような激痛に、男はうめき声を上げ、体をくの字に曲げてもだえはじめた。


目の奥が、焼けるように熱い。


涙じゃない、これは……。


何もないはずの箱の天井から、ポツポツと、小さな水滴が落ちてきたのだ。