恐怖短編集

男が黄ばんだ歯を除かせ、洋太の目の前にあぐらをかいて座った。


洋太と男を隔てているのは、金属製の太い鉄格子だけ。


この檻は刑務所なんかで見られる頑丈なものではなく、どこにでもありそうなただのプレハブでできている。


けれど、目の前の鉄格子だけは本格的なものらしく、触れるとその冷たさで心臓が凍ってしまいそうだ。


「そんなことをしてどうする!!」


思わず、鉄格子の隙間から手を伸ばし、相手に掴みかかろうとする。


その瞬間、延ばした右手に鋭い痛みが走り、洋太は声をあげてうずくまった。


指先が痺れ、細かく震える。