恐怖短編集

「おい! なんとか言ったらどうだ!?」


怒鳴りながら、座ったまま壁を蹴りつける。


立ち上がることは出来ない。それほどの高さも、体の伸ばして寝転ぶほどの幅もない檻だ。


「こんなチンケな檻、ぶっ壊してやる!!」


そう言って、再び壁を蹴りつけた。


いわば、自分は雑な対応を受けているビップな有名人と思えばいい。


ここから逃げ出されたら、こいつらは大そう困るだろう。


その時、一番左端にいた男が動きを見せた。


六人全員がつけている、大きな黒い腕時計。


それをチラリと確認すると、他の五人と目配せし、一歩、前へ出たのだ。


平均よりも一回りほど背が小さいみたいだが、座っている俺から見れば、威圧感は充分すぎるほどあった。