恐怖短編集

洋太は、一瞬ためらうが、それでも食欲には勝てなかった。


男からコロッケを奪い取ると、何日かぶりの固形物を口にした。


「おっさん、相当腹減ってたんだな」


洋太の食べっぷりを見て、男が豪快な笑い声を上げる。


コロッケ一つをあっという間に平らげた洋太は、大きく息を吐き出す。


これくらいで満腹になれるわけがないが、最後の晩餐として最高の味がした。


けれど、それだけではなかった。


「これも食えよ」


その男の言葉をすぐには理解できず、ポカンと口を開ける。


これは何かの間違いか?


マッチ売りの少女か何かと同じで、変な夢を見ているのだろうか?