恐怖短編集

騒音によって聞こえないはずの、携帯が電車の重さによって更に粉々になる音が、確かに聞こえた。


まるで人間の骨が砕け散っていくような、今にも肉片がそこら中に飛び散りそうな悲惨な音。


ひかれた。


携帯ではなく、間違いなく誰か人間がひかれるような音だった。


「ちょっと、大丈夫?」


蒼白顔で立ち尽くしている私に、黄色の派手なスーツに身を包んだ女が声をかけてきた。