その後も、図書館で何度か彼を見かけた。 向こうも私の顔を覚えてくれたのか、目が合えば、軽く会釈をしてくれるようになった。 でも、それだけだ。 きっと、平凡な私には思い及ばぬような夢を抱え、今時の学生にしては珍しく日々真面目に勉学に取り組む彼と、沢山の本に囲まれて毎日を淡々と過ごすだけの私では、何も繋がらない。 決して、多くを望んではならない。 ただこうして、時々その姿を眺められればそれでいいのだと、私は自分をきつく戒めた。