ねえ、稜。私は生まれてはじめて、こんなにも暗い気持ちを知ってしまった。

 それでも、あなたはまだ、私の心は美しいと言える?


「愛しているわ」

 自分から口づけて、目を閉じる。


 絡み合う舌に、鉄仙の蔦を重ねる。

 でも、鉄仙の蔦じゃきっと脆いから、もっと頑丈にしなければ。


 ゆっくりと唇を離し、彼の耳へと近づけた。


「……早く、子どもが欲しいわ」


 ベランダの鉄仙が一輪、ハラハラと風に吹かれて、落ちた。


fin