「新しい花を買ったんだね」 スーツのネクタイを緩めながら、稜が言う。 「鉄仙よ。洋名をクレマチスって言うの。きれいでしょう?」 「ああ、そうだね」 あまり花に興味がない稜の返事は、いつもそっけない。 私には、あなたが今、何を思っているのかわからない。 『稜、あなたは知っているの?』 そう問いかけたい気持ちをぐっと我慢する。 『美亜ちゃんは、あなたのことが好きなのよ』 『あなたは彼女のことを、本当に妹のようにしか思っていないの?』 ベランダの鉄仙が、失いたくなければ何も問うなと訴える。