彼が見つめていたもの。それは、今まさに私が買おうとしていたピンクのガーベラのブーケだった。


 ひそめられた眉が、あの頃を思い出させる。

 別れ際の辛そうな顔。


 自分が苦しいんじゃない。

 私を苦しめていることに苦しんでいる、そういう顔だった。


 ……私は子どもだった。

 駄々をこねて、優しい彼を困らせた。


 どうしても、欲しくて。いざ手に入ったら、続けることが苦しくて。

 簡単に手放した。


 自分のことばかりで、彼のことをちゃんと思いやってあげられなかった。