『僕、家が無いの。』


僕が言うと、中年男性は『そうかそうか、おじさんが買ってあげよう。』と言った。


僕はおじさんに手を引かれ、城のような建物の中に吸い込まれていった。


おじさんは、僕に色々訊いてきた。


僕は積極的に身の上を話した。


だけど、妹のことは言わなかった。


利用されてしまうのが分かっていたから。


唯一の肉親

唯一の家族

唯一の宝物

手放すなんて馬鹿なことはしない

例え、籠の中の鳥にしたって僕は…


『名は何と?』


おじさんの声で我に返る。


『…白夜。』