「忘れてたまるかよ。まだお前から、返事も聞いてねぇのに。約束しただろ?」


背中から伝わる高広の心臓の鼓動、温もり……大好きな人に包まれて、私は幸せだった。


この世界で、ひとりぼっちになった私を、一番大好きな人が見つけてくれたのだから。


「うん……約束したね……」


幸せなのに、どうしてだろう……こんなに胸が苦しくて辛いのは。


最後まで、ずっと言えなかった言葉を、伝えられるのに。


「高広……返事をする前に、ひとつきかせて……」


「あぁ、何だ?」


「もしも……私がいなくなっても、また探してくれる?」


「明日香がどこにいても、絶対に探してやる。でも……もう、どこにも行くな」


その言葉だけで十分だった。


私は、包むようにして回された高広の腕をつかみ、それをゆっくりと開いた。


それと同時に背中に密着していた高広の身体が離れる。


「じゃあ……約束だね。高広……」


その言葉を、高広はどう受け止めてくれたかな?


もう……覚悟はできている。


私は背後にいる高広に、その言葉を伝えるために振り返った。