健司が工業棟に向かって歩いていた頃、留美子と理恵は大職員室前廊下の真ん中で、その時を待っていた。


怖がりの理恵に、パニックに陥りやすい留美子。


そのふたりが、ホールの中央に置かれた棺桶を、上から見下ろしては身震いしている。


南側がガラス張りになっていて、直接は当たらないものの、月の光がうっすらと、頭部がない遥の姿を浮かび上がらせていた。


「上から見ると気持ち悪いね……首がない人なんて不気味だよ」


棺桶に納められている遥のカラダを一瞥し、それに背を向けた理恵。


留美子のように、チラチラと何度も見ようとは、とても思えなかった。


「ホールに残った明日香もかわいそうだよね。私だったら絶対嫌だわ」


棺桶を横目に、理恵にそう耳打ちするが、明日香がホールに残った理由のひとつに、留美子が嫌がったからという事があったのだ。


理恵は怖がりで、いざという時に動けないかもしれない。


高広や翔太には、ぬいぐるみを運ぶという役割がある。


そうなると、留美子か明日香のどちらかしかいなかったわけだが、留美子が断ったのだ。


明日香にしてみれば、どちらでも良かったかもしれないが、留美子は「助かった」と思っていた。