「何してるの! そんな事、私がやるのに!」


私がしがみつかれてたんだから、ドアノブを触るのは私で良かったはず。


でも、高広はそのままドアノブを回し、ゆっくりとドアを引いたのだ。


高広の背後に現れた「赤い人」が、その背中にしがみつき、歌を唄い始める。





「あ~かいふ~くをくださいな~」





その瞬間、重量に耐え切れなくなったのか、ドアノブに手を添えたまま崩れ落ちた。


私の時と同じように、ほんのわずかしかドアは開かれていない。


「早く……入れ」


息も絶え絶えに、私達に言ったその言葉に、私達は従うしかなかった。


今にも死にそうな高広が、ここまでやっているのだから、私達はそれに応えなければならない。




「し~ろいふ~くもあかくする~」




私は、理恵と共に、無理にでもわずかに開かれたドアの隙間に手を入れて、こじ開けようとしたけど……私と理恵は、絶望的な事態に直面してしまったのだ。


ドアと、壁の間に見えない壁がある。


玄関や校門にあったあれと同じやつだ。


「み、見えない壁がある! ダメ、やっぱり入れないんだ!」