『アレク!』
縛り上げられ、王の前に突き出されたアレクに駆け寄ろうとするエルミナ。
しかしそれは、兄弟たちによって、阻止された。
『いったいどういう目的で、わしの娘に近づいたのだ?』
『目的、など……』
すでに体中に傷を負わされていたアレクは、ひざまづかされ、精霊族の王を見上げる。
『ただ俺は、エルミナを……愛しているだけで』
『愛だと!?白々しい!
お前はエルミナを利用し、伝説の剣を手に入れようとしていたのだろう?』
王の目は冷たく、アレクを見下ろす。
『そんな、そんなことは……っ』
『アレク……』
『違うんだエルミナ、断じてそんなことはないっ!!
俺は、君を愛してる!
運命の星に、何万回だって誓う!
愛してる、エルミナ……!』
涙をためた美しい瞳を真っ直ぐに見返し、アレクは断言する。
しかし、彼の想いが報われることは、なかった。
『汚い人間よ。
その体に、消えない傷を残してやろう。
そうして、思い知るがいい。
自分の犯した罪を』
王が冷たく言い放つ。
アレクの紅の左目が、最後に見たのは……
自分に振り下ろされた、短剣の鋭い切っ先だった。



