耳を押さえていると、颯が突然その手をとった。
「……なに?」
「ちょっと、見せろ」
颯の頭と反比例の整った顔が、間近に迫る。
真っ直ぐな視線に見つめられて、仁菜は少し胸が高鳴るのを感じた。
(どうして、見つめるの……?)
頬が熱くなってきた仁菜に、颯はひとこと。
「……大丈夫、傷は見えるとこにはない!よかったな!」
「…………」
颯の笑顔に、嫌な予感がしていく。
「よく考えろ、仁菜。
このまま地球に帰ったら、俺たち英語ペラペラだぜ?
煉獄、海外進出決定だな!俺に日本は狭すぎると思ってたんだ!」
おいおい、暴走族が海外進出して何するの?
日本のアニメの主題歌鳴らしながら道を走るわけ?
やめてよ、日本人がバカにされるよ……。
(こんなやつに一瞬でもときめくなんて、どうかしてる)
仁菜は完全に呆れた顔で、颯をどんよりと見返す。
「……あのね颯、英語ペラペラにはならないよ」
「えっ?」
「これ、聞こえるだけだって。
うちらが話す言葉がその種族に対応するわけじゃなくて、聞く方が自分の知ってる言葉に変換するだけで……」
「……お前、バカじゃねーの?
言ってる意味、全然わかんねーんだけど。
もっとコニミュケーション能力をみがけ」
バカはお前だっ!!
そこにいる全員が、そう思った。
(しかも、コニミュケーションって何。
コミュニケーションでしょ?)
いやたしかに、コミュニケーション能力、低いかもしれないけど。
バカよりはましだと思う。
仁菜は颯を無視し、目の前のこえだ○ゃんハウスもとい、精霊族の木の城を見つめた。