颯は撃沈し、校庭でひざを抱えてしくしくと泣き始めた。


普通ならブティホという選択肢もあるのだけど、颯はお金がない。


なぜなら、お小遣いも家業を手伝ってもらった臨時収入も、すべてマシンに突っ込んでしまうから。


「はい、残念でしたー」

「くっそ……夏休み、バイトするからなっ!」

「はいはい、がんばってね」


仁菜に背中を叩かれ、颯はバイクにまたがる。


するとちょうど、エンジン音に気づいた教師たちが職員室から出てきてしまった。


「やっべ、行くぞニーナ!」

「うん!」


仁菜もバイクにまたがり、颯の腰にぎゅっとしがみつく。


背中にぴたりと頬を寄せると、颯がぽつりとつぶやいた。


「……なんでだろうなぁ。

これだけおあずけ食らって、正直めっちゃしんどいのに、
お前が後ろに乗ると、それだけでいいって気になるわ」


……本当に?


聞きかえそうと思った瞬間、颯は突然バイクを発進させた。