首をかしげると、彼はにっと笑った。


「オラ。見ろよ、テストの結果だ」


目の前に出されたのは、たぶんさっき指さしていた紙切れ。


よくよく見れば、それはテストの結果だった。


教科別の点数と順位が載っている。


「赤点取らなかったぜ、一個も」

「……へー、すごいね」

「だろー。……じゃ、ねえよ!
お前、約束しただろうがっ!
忘れたふりすんじゃねえ!」


もちろん、仁菜は覚えていた。


これまで何度か貞操の危機はあったが、その約束を切り札に、なんとなくかわしてきた。


(だから、いつもよりキラキラした笑顔だったのね……)


「……しょうがないなぁ。約束だもんね。
でも、どこへあたしを連れていく気なの?」

「……あ……」


ドキドキしながら聞くと、颯は考え込んでしまった。


どうやら、場所までは考えていなかったらしい。


「……公園、とか」

「絶対やだっ。変態。いきなり野外なんてありえない!」

「え、じゃあ、うち来るか?」

「裏の工場に家族が全員いるのに?」

「…………」