「なにあれ……ダサ……」


女子グループが、つぶやく。


たしかに颯のバイクは新品だけれど、二人乗り用の背もたれがビヨーンとついていて、明らかなヤンキー仕様だった。


「うん、ダサイね」


思わず仁菜は同意してしまう。


「でもね、彼は最高の彼氏だよ。

頭も悪いし、ファッションセンスもないけど、とびきり優しいの。

それに、あたしのことを何より大切にしてくれるんだ!」


仁菜は彼女らに笑顔で言うと、教室から飛び出す。


階段を駆け下りる。


外に出れば、まぶしい夏の太陽が容赦なく照りつけた。


「お待たせ!」

「おー、何やってたんだよ!
見ろよ、やっと新車をゲットしたぜ。
渋いだろ?」

「……うん」


仁菜はあいまいにうなずく。


すると颯は嬉しそうに、仁菜用のヘルメットを取り出し、彼女の頭に装着した。


「さ、行くか」

「いつものコース?」

「いや」


いつもは海が見える道を、ゆっくり走っている。


そんな帰り道デートが仁菜は好きだったのだけど、今日は違うと颯は言う。