「よく聞きなさいよ。
あたしの彼氏は、暴走族の総長なの。
これ以降、あたしの友達を傷つけるようなことをしたら、チーム全員でぶっつぶすからね!」
仁菜の声が響いたあと、沈黙が教室を包んだ。
(ふっ……決まった……)
仁菜は満足すると、今度こそ帰ろうと踵を返す。
その瞬間、窓の外で大きな音がした。
ドドドドド、というエンジン音に気づいた仁菜は、慌てて窓際による。
そこから校庭を見下ろすと、そこにはバイクにまたがった颯が。
「颯!どうしたの?」
颯はバイクから飛び降り、にこやかな笑顔でそれを指さして何か言っている。
ああ、もしかしたら水でダメになったバイクの代わりを、やっと買ってもらえたのかな。
異世界から帰ってきてから、バイクが壊れた颯は、なんとおじいちゃんのおさがりの原付に乗っていた。
仁菜がそんなことを思い出していると、颯は誇らしげにふんぞり返り、制服のポケットから、細長い紙をぴらりと取り出した。
今度はそれを指さし、満面の笑みで何か言っている。
けれど、2階にいる仁菜にはよく聞こえない。



