「これがランドミルの都(みやこ)。もっと遠くにいくと、もっと低い建物もあるし、もうすこし余裕があるかな」
ラスの言葉どおり、その街を一言で現すなら『ぎっちぎち』だな、と仁菜と颯は思う。
道幅はトラックが通れるくらいはあるけど、建物が密集しすぎている。
そして、緑というものがどこにもない。
見渡す限り真っ白で、活気がない。
仁菜はこの都からなんとなく、白骨遺体を連想してしまった。
「なんだか落ち着かなさそうな街だな」
颯が言うと、アレクとカミーユが苦笑した。
「そうそう、見せたいのはこれじゃなくてね」
ラスが目配せすると、シリウスがうなずく。
シリウスは壁に向かい、扉の横をとんとんと叩く。
すると突然もうひとつの扉が現れ、ゴウンという音とともに壁が開いた。
「ええっ!?」
忍者屋敷か!
突っ込む間もなく、その壁の中から、銀色の何かが飛び出してきた。
「なにこれ!?」
「おおっ!」
颯が目をキラキラさせる。
壁から出てきたのは、銀色の乗り物だった。
颯のバイクに似ているけれど、車輪がない。
あるのは座席と、ハンドルと、ペダルのようなもの。
どこが継ぎ目かわからない、つるりとした銀色の異世界バイク。
サイドについている燃料タンクやマフラーらしきものをベタベタ触りながら、颯ははしゃいだ。



