白い廊下を通っていくと、やがて厚い扉が見えた。
それをラスが開くと、途端にむわりとした空気が仁菜の全身にまとわりつく。
広いバルコニーのようなそこは、白いてすりに囲まれていた。
「あっつ……」
まるで真夏のような、喉や胸を押しつぶすような暑さ。
まぶしい太陽から発せられる光が、じりじりと肌を焼く感覚。
ブラウスの上にカーディガンを着ていた仁菜は、たちまち汗びっしょりになった。
「うわあ……」
手でひさしを作り、バルコニーからの景色を眺めた仁菜は驚く。
そこに広がるのは、見たこともないような街だった。
何でできているのかわからない、つるりとしたビルやマンションみたいな背の高い建物がずらりと並んでいる。
その建物どうしの間には、空を覆うくらい数多くの電線が張り巡らされていた。
地上はアスファルトのようなもので多い尽くされ、その上に通る人は……豆みたいに小さくて、よく見えない。
(た、高い……)
めまいを感じた仁菜は、バルコニーの手すりからあとずさった。
そんな仁菜の肩を、颯が後ろから支える。
「大丈夫か?
つうか、すげーなこりゃ……」
バカは高いところが好き。
その言葉を証明するように、颯はどこかわくわくしたような顔で、遥か地上の白い街を見渡していた。



