「とにかく、今はのんびり話してる余裕ないんだろ。

さっさとやることやって、お前の国に帰ろうぜ」


颯はラスの肩をたたく。


「……そうだね。無事に帰ったら、ゆっくり話をしよう」


ラスは微笑み、うっそうと茂る森の方へと視線をうつした。


「二人とも、あのとがった山みたいなもの、見える?」


ラスが指さす方向を見ると、たしかに森の向こうに黒いとんがり帽子の先のようなものがうっすらと見えた。


「あそこに、風の樹の実はあるはず。

一度衛星を飛ばして、確認してる。

すぐにばれて、衛星は粉々に吹っ飛ばされたみたいだけど」


「座標はちゃんと記録してある。

二人とも、行こう」


二人はうなずき、先を歩くラスとシリウスの後ろをついていく。


歩みを進めるたびに森は深くなり、暗く、不気味な気配が漂う。


だけど、仁菜は怖くはなかった。


「行くぞ、ニーナ」


颯が笑って、手をさしのべてくれたから。