そんな剣、自分たちは見てもいないし、触ってもいない。
いったいどうして……。
考え込んでいると、颯が「あっ」と声を上げた。
「ニーナ、お前、川上の方でクレーンが動いてるの、見なかったか?」
「えっ?」
クレーン?
仁菜は自分の記憶を探る。
あの日は気分が最低で、川辺でぼんやりしていて……。
死んでしまおう、死んでしまおうと思っていたのに、足はなかなか動かなくて。
そのうちに、近くの端の上から『となりのト○ロ』が聞こえてきて……。
「あっ……あった。あったよね、クレーン。
結構遠くに見えたけど」
「俺、そのクレーンのそばを通ったんだけどさ。
たくさん人がいたわ。
『調査中なんだから、静かにしろ』って怒られた」
怒られるヤンキーって……完全になめられてるじゃん。
仁菜はまた呆れながら、今はそれどころじゃないと気づく。
「あのクレーン……川の底をさらってたの……?」
「……まさかそれで、聖剣がうっかり引き上げられて……」
「その瞬間、私たちは川に落ちて……」
「こっちの世界にきちまったのか!?」



