「ああ、王子、ここにいた」


弟はぜえはあ言いながら、ラスを見た。


「大変だ。見張りから連絡があった。

魔族が、魔族が……」


切れ切れのその言葉を聞くなり、ラスは駆けだす。


その後を、仲間たちが追った。


軍艦から砂漠の外へ出ると、砂漠の民が数人ほど、空をながめていた。


仲間たちもそれぞれ、空を見上げる。


「あれは……っ!」


ラスが声を上げた。


ほとんど雨が降らない砂漠では、いつもぎらぎらと太陽の光が照り付けていたのに、今はほんのりと暗い。


それもそのはず、彼らが見上げた空の上は、黒い翼をもつ大きな鳥で埋め尽くされていた。


「魔族……!」


シリウスは視線の先に、黒い鳥に乗ったルカとロカを見つけた。


よく見ると、それぞれの鳥の上に、人の形に似た魔族が乗っている。


カミーユが慌ててタブレットを取り出す。


鳥たちが向かう方向を調べるためだ。


その座標を見て、タブレットをのぞいていたアレクがうなる。


「ランドミルへ向かっているのか」

「そのようです」


とうとう、魔族が本格的に動き出してしまった。


彼らはランドミルを滅ぼし、智慧の塔を手に入れようというのだろう。