……自分の未来は、自分で決める。


それは、当然のことに思える。


だけど、誰が本当に、選びたい未来を選べているだろうか?


どこかで妥協して、自分はこんなものだとあきらめて、周りの意向に沿おうと考えて。


本当に『選びたい』未来じゃなくて、『選ぶしかない』道を通っているだけの人が、どの世でも大半だろう。


仁菜自身も、母親の言う通りの道を選んできた。


周りに流されて、自分で選択したことなんかほとんどなかった。


(でもそれって、楽をしていただけなのかもしれない)


誰かに選んでもらえば、その責任の場所は自分じゃないから。


うまくいかなければ、文句だけ言っていればいいから。


けれど。


(ああ、そうか……)


選んでいいんだ。


あたしが、あたしの未来を決めていけるんだ。


責任さえ持てば。覚悟さえすれば。


あたしが、自分の未来を選んでいいんだ。


仁菜は顔を上げる。


そこでは、仲間たちが彼女に優しく微笑んでいた。


彼女の思うことすべてを、受け入れると言うように。


その中に、颯の姿も見えた気がした。


いつものように自身満々な眼光で、腕を組んで、ふんぞり返って。


大きくうなずいてくれたような、そんな気がした。