「突然の訪問と言う形で、精霊族の多くが今、ランドミルにいる。

内輪もめしていることを精霊族に知られたくない王妃は、軍を派手に動かせなくなった」


このすきをつき、なんとか決着をつけたいと、つまりはそういうことらしい。


「でも……伝説の勇者はいなくなってしまった」


アレクが言う。


そう、智慧の塔にあった予言では、颯が勇者となり、ランドミルを救うはずだった。


「それが原因で、砂漠の民たちも動揺しています」


カミーユが深刻そうに言うと、ラスが前に出た。


「ニーナ、つまり俺たちは、なるべく早く風の樹の実を手に入れて、境界の川の結界を復活させたいんだ」


「……それって、つまり……」


「私たちだけで、目的を果たそうということだ」


シリウスがきっぱりと言う。


「異世界の勇者はいなくなった。

しかし私たちには、運命の花嫁が残っている。

つまりそれは、お前のことだ。ニーナ」


仁菜は黙って、シリウスの次の言葉を待つ。


にぎった手のひらに、しっとりと汗がにじんだ。


「お前に、この中の誰かと結婚してもらいたい。

私たちの幸せは、ランドミルの繁栄なしにはありえない」


つまり、彼らの中の誰かと仁菜が結婚すれば、ランドミルは守れるということ。