ヤンキー君と異世界に行く。【完】



「……この川が、この世界を二分する、『境界』だ。

こちらの森の方は、魔族が住む『魔界』となっている。

そしてこちらの砂漠の方が、我々が住む『人間界』。

太古の昔から相容れなかった二つの種族は、度重なる戦争の末、この境界の川によって隔絶された。

この川は、ラス様の先祖が聖剣で地を割って作ったものだ」


「ち、地を割る……」


仁菜は絶句。


颯にいたっては、既についてこられないらしく、ぽかーんと口を開けている。


「この川は、誰にも渡れないように魔法がかけられています。

魔族も人間も、この川を越え、お互いの領域に踏み入れられないように。

古代の王は、そうしてこの世界を平和にしたのです」


カミーユが言い、次にアレクが続く。


「川には、王の所有していた聖剣が、『楔(クサビ)』として眠っていた。

しかしその『楔』がなんらかの原因で失われ、川は『境界』としての役目を果たせなくなってしまったらしい」


「川……もしかして、俺たちが落ちた川と、その川がつながってたのか?

それで、ここまで流されてきたとか……」


そんなわけないじゃん。どこまでおバカなの、こいつ。


仁菜は颯の発言に呆れたが……。


「簡単に言えば、そういうことだね」


ラスが、まさかの肯定。


「ええ~!?」